スポンサーサイト

  • -
  • 2014.08.26 Tuesday

一定期間更新がないため広告を表示しています


ミスタースポック

造語の説明:

工学部の経営工学科の情報心理学研究室では、実に様々な分野のテーマに取り組みました。「ミスタースポック」というのは、道路に設置されている道路標識の最適配置を考えるコンピュータ・プログラムに付けた名称です。

これは、造語という程のものではありませんが、面白かったので印象に残っています。


大阪に交通科学研究会というのがあり、興味があったので参加しました。私が取り組んだテーマに、道路標識の最適配置の研究、高速道路のトンネル内の追突事故の解析、タコグラフの解析などがあります。


1975年(昭和50年)、卒研生の棚橋和隆君(卒業後、保険の事務の仕事しています)が、テーマのことで相談に来ました。彼は、写真とドライブに関心があり、そのことに関係の深いテーマで卒業研究をしたいと申し出てくれました。テーマの希望を自分から積極的に申し出てくれたのは、きわめて稀でした。もちろん、彼の申し出を受け入れました。


私は自分もマイカー・ドライバーであったので、道路の標識やサインに関心がありました。そこで、彼に「道路標識の設置状態」を調べ、改善案を考えるというテーマを提案しました。彼に、地元の岐阜県や大学の所在地の大阪府などをドライブして、道路標識の写真を撮って、写真を元に問題点を指摘したらどうかと助言しました。


彼は、自分の主観で改善点などの意見をいろいろと言ってくれました。私は、「主観的な君の意見だけでは、どうしても改善案は無視され易いので、客観化しよう」と指導しました。その結果、コンピュータで改善案を出すプログラムを作ることになりました。


そのプログラムの名称が「ミスタースポック」です。その後、数人の卒研生がこのプログラムを改良して、何とか実用にこぎつけました。



造った理由:

当時(昭和50年)のことですから、プログラミング言語はFORTRANで、大阪大学の大型計算機センターのマシーン(NECのNEAC2200のシリーズ)を使いました。大阪電気通信大学と大型計算機センターとは、専用回線で繋がり、TSS(タイム・シェアリング・システム)や、RB(リモート・バッチ)が、本学から利用可能でした。


このプログラムは、テーブル参照方式で、道路の形態と設置されている標識(規制標識、警戒標識、指示標識、補助標識など)を入力すると、最適な配置案を取り出してくる簡単なものにしました。


もちろん、道路は立体(3次元)なので、問題解決の常識として、まず2次元ずつにしました。1枚は道路を真上から見た場合の図(鳥瞰図)で、他の1枚は道路の断面を見た場合の図(断面図)に分けました。


当時の交通事故のデータから、交差点での事故が80%を占めていましたので、交差点に限定してプログラムを開発しました。道路を真上から見た鳥瞰図を用いて、道路の交差点の形で分類しました。それは「○○路」と呼ぶことにし、「○○路交差点」としました。


例えば、十字の交差点なら十字路交差点、変形した十字路なら変形十字路交差点、Y字路交差点(アルファベットの「Y」の形の交差点)、ト字路交差点(カタカナの「ト」の形の交差点)、T字路交差点(アルファベットの「T」の形の交差点)、5叉路交差点(5本の道路が交叉している所)、円形路交差点などに分類しました。


次に、道路標識が設置されている道路の地点を、鳥瞰図を基に位置(地点)をアルファベットで示すことにしました。それは「○○地点」と呼びました。例えば、十字路交差点では、交差点の手前はA地点とか、交差点の直後はB地点とか、左折した所はC地点とか、右折した所はD地点というように名付けました。


標識の設置の場所ですが、断面図を基に設置箇所を決めました。それは「○○箇所」と呼ぶことにしました。例えば、道路の真正面をZ箇所(通行止めの場合)、オーバーハングで道路の上の方をY箇所、中央分離帯がある場合はX箇所、安全地帯がある場合はW箇所、信号機のある所で、信号機のすぐの上下左右はV箇所、道路の左側や歩道はU箇所、一方通行では道路の右側もあるので、そこはT箇所、ブリッジや陸橋はS箇所などとしました。


道路交通法にある標識は、規制標識、警戒標識、指示標識、補助標識、案内標識の5つですが、すべて番号が付いていますので、その番号を用いて区別しました。ただ、案内標識だけは、このプログラムでは別扱いとしました。


大学のある寝屋川市内で、信号機のある十字路交差点に、指定方向外進入禁止、追い越し禁止、最高速度、大型貨物・乗用自動車通行止めの4つの規制標識がある所で、ミスタースポックを動かしました。結果は、標識は一箇所に固まらず、運転者から見やすく配置する案となりました。



エピソード:

このプログラムが出来て、その結果を大阪交通科学研究会で発表しました。主観的な考えではないことを主張するために、プログラムに「ミスタースポック」と名付けたのですが、これは当時人気番組の「スタートレック」の登場人物から拝借しました。


その人物は、いつも理性的で、客観的な意見を出す役でした。この名称を発表した時、研究会場で笑ってくれたのは、たった一人だけでした。スタートレックのファンは、まだまだ少なかったのですね。


この研究ではいくつかの新聞社が、取材に来てくれました。ほとんどの日刊紙は、研究の動機や成果の取材でした。その中でも、京都新聞社は、京都市内の三条あたりの道路の現場写真を持ち込み、「ミスタースポックはどんな答えを出すか、やって見せるように」要求されました。


もちろん、ミスタースポックは答えを出しました。すると、それが新聞の記事になりました。京都新聞の取材の熱心さがよく分かりました。この新聞の取材と記事、学生と喜び合いました。



公表文献:

コンピュータを用いた規制標識の最適配置の研究、交通科学、第7巻、
第1・2号合併号、1978年。

現代人間工学概論、10章2節にあります、オーム社、1980年1月。

実例で学ぶ情報処理、情報科学シリーズ2、第1編、交通安全のための情報処理、
にあります、パワー社、1982年3月。




 

スポンサーサイト

  • -
  • 2014.08.26 Tuesday


講師のご紹介 【向塾】

大和 可也
(やまと かや)

1944年生まれ。高知県出身。
早稲田大学文学部卒。
教育プロデューサー。

大学卒業後1969年〜1987年 (株)学習研究社勤務。 独立後、メディアプロデューサーとして活躍。
その後、大学講座演出、プロデュースを手掛ける。

大和 可也の記事一覧を見る

相澤 将之
(あいざわ まさゆき)

1942年生まれ。東京都出身。
法政大学経営学部卒。
元東京リコー社長。

相澤 将之の記事一覧を見る

石桁 正士
(いしけた ただし)

1936年生まれ。和歌山県出身。
和歌山大学学芸学部(現教育学部)卒業。(教育学士)
大阪市立大学大学院工学研究科修了。(工学博士)

京都大学、大阪大学を経て1970年に大阪電気通信大学助教授に就任。その後教授を経て2007年名誉教授となる。
やる気研究会の主宰や情報教育学研究会(IEC)の発起人として活躍し、現在大阪電気通信大学の客員研究員として教育の研究に従事。

石桁 正士の記事一覧を見る

木村塾長 コラム

記事リスト【講師が語る。】

検索

リンク

sponsored links

ケータイで見る

qrcode