スポンサーサイト

  • -
  • 2014.08.26 Tuesday

一定期間更新がないため広告を表示しています


占席情報処理

小学校から高等学校まで、教室の座席は固定制で、座る場所が決められていましたね。ところが、大学に入ると、大教室で自由座席制となり、どこに座ってもよいので、自由や開放感を感じました。その結果、私語の癖がついたのではありませんか。


さて、あなたは教室のどの席に座りましたか。教室のどの位置に座っていましたか。誰の横に座りましたか。いつも座る場所を決めていましたか。私たちは、座席位置を「占席」と呼び、座席位置を調査しました。これは人間の行動を研究の試みだったのです。



造語の説明:


自由座席制の教室で、学生一人ひとりの座った場所を知るために、私と吉川博史氏(前大阪電気通信大学教員、現在、太成学院大学教授)は、マークカードを採用して、座席位置を丹念に調べました。


調べ方は、教室に座標軸(X座標とY座標)をとり、座った場所の座標を、例えば、前から12列目であれば、X=12と、横から9行目であれば、Y=9などとカードに、マークしてもらうようにしました。


このマークカードは、毎回、授業で配布し、毎回、学生番号と座標位置を記入してもらいました。これで受講者の出席が確認できるのです。さらに、このカードを利用して、簡単な小テスト(クイズ)も可能にしました。これは、「大学における教育情報処理」という研究の一分野でした。


造った理由:


このような調査を始めたきっかけは、当時、東海大学 工学部の教授の菊川 健先生(教育工学の専門家)の助言をいただいたからでした。どの学生が、どんな学生と並ぶか、半期15回中何回並ぶか、全期30回中何回並ぶか、大体教室のどのあたりに座るかなどを調べると、交友関係が分かり、どんなグループが出来ているかが分かるということが狙いでした。


私たちは、逆に「どんな学生が、ぽつんとひとり孤立しているか」、「教室のどこに、どんな成績の学生が座るか」、「座席のとり方に、どんな傾向があるか」などを知りたいと考え、マーク・ドキュメント・リーダー(マークカードリーダー)を用意し、特別に印刷したマーク式のカードを作り、担当する科目で調査しました。当時は、中間媒体として「紙テープ(8単位の穿孔式紙テープ)」を用いていました。



「占席情報処理」は、マークカードの配布と回集、占席位置の確認、データ入力、個別処理、統計処理、半期あるいは通年を通じた占席の図示など、一連の作業に付けた名称でした。座席移動の様子を図示するために、XYプロッター(移動ペン式印刷機)を用いていました。



エピソード:


コンピュータで座席位置を処理してみますと、たまに1つの席に2人の学生が座っているのが見つかります。大抵は、入力ミス(座標位置の勘違いによるミス、あるいはマークミス)でしたが、「座席指定車のダブル・ブッキング」みたいですね。該当者2人を呼び出し、皮肉たっぷりに質問して、修正させます。


ある時、女子学生と男子学生が、同じ座席をマークしていましたので、「なぜ、女子学生の膝の上に座って講義を聞くのか」なんて冗談を言いましたら、「僕は、絶対していません!」なんて真剣に申し開きしていました。ちょっと冗談がすぎたかなあ。


占席データを処理してみますと、いくつかのタイプが見つかりました。名付けて「達磨型」、「秀吉型」、「フーテンの寅さん型」の3つでした。これは、中心座席(一番頻度の高い座席位置)を求め、そこからの移動距離を算出して決めました。


「達磨型」は、石の上にも3年の謂れの通り、半年間あるいは1年間、いつも教室の中央で、一番前の列か二番目の列に座るのです。真面目で、出席率が高く、成績がよく(A評価)、確実に単位を取得できる学生たちでした。


「秀吉型」は、はじめは教室のあちこちの座席に座るのですが、やがて「定位置」を決め、そこに座るようになるのです。教室の前よりに座り、欠席が少なく、成績もまずまずで(B評価以上)で、平均的な学生でした。


「フーテンの寅さん型(以下、寅さん型)」は、一定の座席位置がなく、半年間あるいは1年間、教室のあちこちに座るのです。出席率もあまり高くなく、成績もC評価か、D評価(単位なし)でした。


「寅さん型」にも、3種類あって、「大寅」、「中寅」、「小寅」です。「大寅」は、定着する座席がありませんし、欠席も多く、真面目度が低く、単位はほとんど取れません(D評価)でしたので、次年度、受け直し組になりました。


次年度の占席データを見ますと、「大寅」が「小寅」になり、しかも教室の前の方に座るようになると、単位が取得できる可能性が高くなりました。でも、C評価でした。


こうした研究の結果は、ET(教育工学の研究会)などで発表しましたら、皆さん、「これは面白い」と言ってくれました。私たちの研究分野ではなかったのですが、教育社会学の分野の方からも、「面白い研究だ、ネーミングがまた面白い」と言ってくれました。


「達磨型の学生」、「秀吉型の学生」、「寅さん型の学生」、今どうしているかなあ。私は、ずっと気になっています。



公表文献:

教育情報処理、情報科学シリーズ6、パワー社、1985年10月。



 

スポンサーサイト

  • -
  • 2014.08.26 Tuesday


講師のご紹介 【向塾】

大和 可也
(やまと かや)

1944年生まれ。高知県出身。
早稲田大学文学部卒。
教育プロデューサー。

大学卒業後1969年〜1987年 (株)学習研究社勤務。 独立後、メディアプロデューサーとして活躍。
その後、大学講座演出、プロデュースを手掛ける。

大和 可也の記事一覧を見る

相澤 将之
(あいざわ まさゆき)

1942年生まれ。東京都出身。
法政大学経営学部卒。
元東京リコー社長。

相澤 将之の記事一覧を見る

石桁 正士
(いしけた ただし)

1936年生まれ。和歌山県出身。
和歌山大学学芸学部(現教育学部)卒業。(教育学士)
大阪市立大学大学院工学研究科修了。(工学博士)

京都大学、大阪大学を経て1970年に大阪電気通信大学助教授に就任。その後教授を経て2007年名誉教授となる。
やる気研究会の主宰や情報教育学研究会(IEC)の発起人として活躍し、現在大阪電気通信大学の客員研究員として教育の研究に従事。

石桁 正士の記事一覧を見る

木村塾長 コラム

記事リスト【講師が語る。】

検索

リンク

sponsored links

ケータイで見る

qrcode